前回は、ハンマリングとプリングを組み合わせた、トリルについて書きました。
今回は、「ポーン」「キューン」といった高い周波数の音を出せる、“ハーモニクス奏法”について書いていきます。
ハーモニクス奏法とは
“ハーモニクス”という言葉自体は、倍音という意味もあります。
書いて名のごとく、ハーモニクス奏法とは、(ほぼ)倍音のみを意図的に鳴らす奏法です。
ヴァイオリンにおいては、“フラジオレット”と呼ばれる奏法がこれにあたります。
そもそも、“倍音”とは何か
倍音と聞いても、なかなかピンと来ない方もおられるかと思いますので、ギターを例にとって簡単に説明します。
実は、ギターという楽器は弦を直接押弦して音程を変えるという、とても原始的な構造の楽器なので、倍音の仕組みを理解しやすい楽器です。
例えば、ギターで3弦の開放弦を弾いたとします。
この時の音程は、“G(ソ)”になります。
しかしながらこの時、実際にギターから鳴っている音程は、正確にはG(ソ)だけではないのです。
整数倍の周波数を持つ音程
では、他にはどんな音程がギターから鳴っているのか?
その音程は、弾いた音程の周波数に対して、整数倍の周波数を持つ音程です。
コレが、“倍音”と呼ばれる音になります。
とはいっても、文字だけだと分かりづらいので、下図を使って説明していきます。
~まずは、1倍の周波数~
いま例に挙げている3弦の開放弦を、この図に当てはめてみます。
3弦の開放弦は、図では一番上のものになります。
開放弦は、基準となる1倍の周波数になります。
~2倍の周波数~
次は、3弦開放の2分の1の長さです。
開放弦の2分の1の長さは、ちょうど12Fのフレットバーの上の位置にあたります。
12Fを押さえて、開放弦の2分の1の長さで音を出すと、開放弦の周波数の2倍の周波数を持つ音程が出ます。
ちなみに、開放のG(ソ)から1オクターヴ上のG(ソ)の音です。
~3倍の周波数~
では、開放弦の3分の1の長さだとどうなるのでしょうか?
開放弦を3分の1の長さに分割する位置は、7Fと19Fのフレットバーの位置になります。
7Fを押さえて弾くと、開放弦の3分の2の長さになってしまうので、3分の1の長さで音が出るのは19Fです。
3分の1となる19Fを押さえて音を出すと、開放弦の周波数の3倍の周波数を持つ音が出ます。
この音は、開放弦のG(ソ)の1オクターヴ上のD(レ)の音です。
つまり、5度上の音の更に1オクターヴ上の音という事ですね。
~4倍の周波数~
続けて、4分の1の長さです。
開放弦を4分の1の長さに分割する位置は、5F・12F・24Fです。
12Fで2分の1なので、それをさらに2分の1にする位置が5Fと24Fの位置、という感じです。
最もブリッジ側の24Fを押さえて音を出すと、4分の1の長さの音が出ます。このとき、開放弦の4倍の周波数を持つ音が出ることになります。
音程は、3弦開放のG(ソ)から2オクターヴ上のG(ソ)です。
見えてくる法則性
・・こうしてみると、法則性が見えてきます。
そう、ギターで整数倍の周波数を持つ音を出すには、弦をその整数分の1の長さにすれば良いのです。
上記の例で、1倍~4倍までを図解しました。もちろん実際には5倍以上も存在しています。
しかしながら、5倍以上のものはギターのハーモニクス奏法で使われることが稀なので、ここでは割愛します。
開放弦に含まれる整数倍の要素
開放弦を鳴らすと、先程の2~4倍の周波数を持つ弦振動の要素が、同時に振動してるんです。
この、様々な倍音を含むことで、ギターの「ベーン」という音色を作り出しています。
視点を変えると、倍音の含み方がその楽器の音色を作りだしている、とも言えるかもしてません。
逆に、倍音を含まない音は、時報などで聞かれる「ポーン」という音色です。
自然界にある音は倍音を含むことが大半なので、倍音を含まない音(純音)は人工的な音色であることがほとんどです。
倍音のみを鳴らすハーモニクス奏法
説明が長くなりましたが、いよいよハーモニクス奏法の登場です。
前記したように、
ギターの開放弦の2・3・4倍の周波数を出すとき、弦の長さの2・3・4分の1の場所(フレット)を押さえます。
その時、弦を2・3・4分割する位置のフレットを思い出してみましょう。
- 2分割 → 12F
- 3分割 → 7F,19F
- 4分割 → 5F,(12F),24F
まずは、例として2倍の周波数を持つ倍音を、ハーモニクス奏法で鳴らしてみましょう。
12Fでハーモニクス奏法
2倍の周波数を持つ倍音を鳴らす場合、開放弦を2分割する位置、つまりは12F でハーモニクス奏法をします。
やり方は、
- 12Fのフレットバーの真上辺りを、指で弦に軽く触れます(※押弦するのではなく、軽~く触れるだけです)。
- そのまま弦をピッキングします。
- ピッキングした瞬間に、触れていた左手の指を離します。
いかがですか?
「ポーン」という透き通ったような音が出たと思います。
よく見ると、あら不思議!
ナットから12F、そして12Fからブリッジ、見事に弦の振動が2分割されています!
これが、開放弦から2倍の周波数を持つ倍音を鳴らした状態です。
開放弦の1オクターブ上の音が鳴っています。
厳密にいうと、1倍(開放)や3倍の周波数の振動がミュートされているため、2の倍数となる周波数以外は鳴っていない状態です。
つまり、余分な倍音が減る(純音に近い)ために、透き通ったような音色になるわけです。
次回は、、
12Fのハーモニクスを出してみたところで、今回は締めたいと思います。
次回は、実際にギターで演奏する際の、ハーモニクス奏法のコツ。
そしてハーモニクス奏法のバリエーションに触れたいと思います。
では、今回はこの辺で!
by Akimaru
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